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フレーベル主義と進歩主義の攻防
山本 孝司 著
価格: 2,700円+税
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商品の紹介
[2025年11月刊行予定]
本書の関心は、アメリカ幼稚園運動期に、アメリカにおいて幼稚園と小学校が接続されゆく過程と、その過程でフレーベルの思想の捉え方を巡る幼稚園関係者内部における対立に向けられている。幼稚園運動における幼小接続の流れを、フレーベル主義と進歩主義の対立として描き、幼稚園カリキュラムおよび幼稚園と小学校の接続カリキュラム策定の過程における論争を検討することで、幼稚園運動当時の実践家たちの幼稚園教育観の抽出を試みる。そして、これらの先行事例をもとに、日本における幼小接続の取り組み、またその方向性について、示唆を得ることを目的としている。
[目次]
序論
第1章 19世紀アメリカ幼稚園運動の一断面―エリザベス・P・ピーボディによる幼児学校批判と幼稚園教師養成にみる幼稚園教育観― はじめに 1.ピーボディによる幼児学校批判 1-1 幼児学校の性質 1-2 ピーボディによる幼児学校批判の論点 2.幼稚園公立化に対するピーボディの態度 3.ピーボディによる幼稚園教師養成の意図 小 括
第2章 超越主義と進歩主義教育の間―ミッシング・リンクとしてのピーボディ幼児教育思想― はじめに 1.超越主義と進歩主義教育 2.超越主義者としてのピーボディ 3.進歩主義教育者としてのピーボディ 3-1 アメリカ初の英語幼稚園開設とフレーベル主義の普及 3-2 公立学校幼稚園に対する姿勢 小 括
第3章 ピーボディ教育思想における幼稚園の位置づけ―家庭・学校との関係に焦点化して― はじめに 1.アメリカ幼稚園運動とピーボディ 1-1 アメリカ初の英語幼稚園 1-2 渡欧とフレーベル主義幼稚園教師との接触 1-3 バックヤードとしての活動 2.オルコットとの関係――幼児学校批判 3.ハリスとの関係――公立学校幼稚園への批判 小 括
第4章 アメリカ幼稚園運動期におけるキリスト教的人道主義の諸相―幼稚園を拠点とした社会事業に着目して― はじめに 1.アメリカ幼稚園運動とキリスト教 1-1 キリスト教的人道主義 1-2 アメリカ幼稚園運動におけるキリスト教教会幼稚園 2.幼稚園運動におけるキリスト教的社会変革のエートス 2-1 「社会的福音」としての幼稚園教育 2-2 社会事業としての展開 3.幼稚園運動の岐路と慈善幼稚園 小 括
第5章 ウィリアム・T・ハリスの幼児教育思想―アメリカ幼稚園運動における幼小接続の原点― はじめに 1.ハリスによる幼稚園の位置づけ 1-1 公立学校幼稚園の設立 1-2 幼稚園教育に対するハリスの立場 2.フレーベル主義幼稚園と進歩主義幼稚園の間 2-1 サブ・プライマリー化の原点としてのセントルイス公立学校幼稚園 2-2 進歩主義幼稚園の台頭 3.進歩主義教育へのハリスの態度 3-1 子ども中心主義に対する批判 3-2 進歩主義教育の背景となる新心理学と児童研究への抵抗 小 括
第6章 ハリス教育思想の一断面―平等主義に立つ教養教育重視の伝統主義の背景再考― はじめに 1.平等主義的要素の起源 2.思弁的心理学による「新心理学」、児童研究運動への抵抗 2-1 『教育の心理学的基礎』の出版 2-2 ハリスの社会観と教育観 2-3 教養教育重視の伝統主義 3.民主主義社会の建設に向けた個人と社会の弁証法的発展 3-1 自己活動による道徳陶冶 3-2 サブコミュニティの対立解消による社会の弁証法的発展 小 括
第7章 19世紀アメリカにおける幼小接続カリキュラムの原像―セントルイス公立学校幼稚園に焦点を当てて― はじめに 1.セントルイスにおける幼稚園教育導入の背景とその展開 1-1 セントルイス教育長ハリスの関心 1-2 ブロウによる実践 1-3 セントルイス学校区における幼稚園の展開 2.セントルイス公立学校幼稚園の幼小接続カリキュラム――「遊び」を通した規律化による初等教育へのつなぎ 小 括
第8章 スーザン・E・ブロウの幼稚園教育実践の背景―アメリカ幼児教育思想への絶対的観念論の反映― はじめに 1.ブロウ実践理論の背景となる観念論 2.自然主義から精神主義への移行 2-1 「新しいルソーの信条」に対する批判 2-2 人類的視点の必要性――精神の「系統発生史」に基づく「個体発生史」としての弁証法的発展過程の教育 3.「社会化された学校」に対する批判と教育目的としての「部分的全体」 3-1 ブロウによる19世紀末教育プログラムの批判的検討――「社会化された学校」に対する評価 3-2 「部分的全体」の教育の推奨 小 括
第9章 アメリカ幼稚園運動期におけるフレーベル主義保守派による進歩主義幼稚園批判の論点―ブロウの幼児教育思想に焦点化して― はじめに 1.幼稚園教育運動におけるブロウの功績 2.19人委員会における論争 2-1 論争の経緯 2-2 ブロウによる報告書の論点 3.ブロウの幼小接続理論 3-1 中心統合プログラムへの批判 3-2 自由遊びプログラムへの批判 3-3 産業的プログラムへの批判 小 括
第10章 アリス・テンプルの幼稚園教育思想―アメリカ進歩主義教育期における幼小接続カリキュラム開発の試み― はじめに 1.アメリカ幼稚園運動におけるテンプルの位置づけ 1-1 アリス・テンプルの個人史概略 1-2 アメリカ幼稚園運動におけるテンプルの功績 2.テンプルの幼小接続カリキュラム 2-1 アメリカにおける幼小接続の流れ 2-2 幼稚園と小学校第1学年の統一カリキュラム――幼小接続のスコープとシークェンス 小 括
第11章 テンプルによるシカゴ大学附属実験学校の展開―幼稚園カリキュラムへのデューイの影響― 167 はじめに 1.デューイ在職時におけるシカゴ大学附属実験学校における幼児教育 1-1 シカゴ実験学校の性格 1-2 設立当初の幼児教育カリキュラム 2.テンプル在職時におけるシカゴ大学附属実験学校の幼児教育―デューイ理論の継承 2-1 カリキュラムの基調としての社会的心理的側面の重視 2-2 幼児教育における目的ある活動を通した学習 3.シカゴ大学附属実験学校における実践 3-1 幼小接続カリキュラムの開発と幼稚園カリキュラムの小学校カリキュラムへの拡張 3-2 幼稚園教員養成課程の設置と教員養成の実習施設としての性格の加味 小 括
第12章 アメリカ進歩主義教育期における幼小接続の試みに関する考察―ホーレス・マン幼稚園のカリキュラムを中心に― はじめに 1.進歩主義教育期における幼小接続に関する課題意識の明確化 2.ホーレス・マン幼稚園における幼小接続カリキュラムの開発 3.接続カリキュラムとしての「コンダクト・カリキュラム」 3-1 接続の要としての子どもの生活経験 3-2 ホーレス・マン幼稚園における幼小接続の実践 小 括
第13章 パティ・スミス・ヒルのコンダクト・カリキュラム創造過程―フレーベル主義批判の論点とその克服を中心に― はじめに 1.アメリカ幼稚園運動の生起とフレーベル主義の受容 1-1 ドイツ語幼稚園の移入と英語幼稚園の普及 1-2 公立学校幼稚園の設置 2.ヒルよるフレーベル主義批判の動き 2-1 ヒルの経歴 2-2 フレーベル主義批判の顕在化 3.ヒルのコンダクト・カリキュラムの着想とフレーベル主義の克服 小 括
第14章 エラ・ヴィクトリア・ドブスの手工教育実践に関する考察―アメリカ進歩主義教育期における幼小接続の試みの一断面― はじめに 1.アメリカにおける手工教育とドブスの教育経験 1-1 スロイドの導入と手工教育の生起 1-2 ドブスの手工教育 2.ミズーリ大学における教育実験――手作業によるプロジェクト学習 3.全国初等教育評議会での活動――幼稚園と小学校の接続構想 小 括
第15章 ウィリアム・N・ヘイルマンの幼小接続構想―初等教育におけるフレーベル主義保守の論理― はじめに 1.ヘイルマンの幼児教育への貢献 1-1 幼児教育に関わる職歴 1-2 フレーベル主義との関係 2.幼稚園と小学校の違いをめぐる議論 2-1 小学校への制度的接続としての幼稚園の公立化 2-2 幼稚園教育の原理をめぐるフレーベル主義批判の背景 3.ヘイルマンによる幼小接続 3-1 「接続クラス」のカリキュラム 3-2 接続の実際 小 括
第16章 アメリカにおける幼小接続カリキュラム開発過程―国際幼稚園連盟における論争とデューイ・スクールの実践に着目して― はじめに 1.幼稚園教育の差別化と小学校への接続 1-1 幼稚園運動草創期の幼稚園の位置づけ 1-2 制度的な幼小接続 2.国際幼稚園連盟の設立と幼稚園教育の普及 2-1 国際幼稚園連盟の設立 2-2 国際幼稚園連盟内における新旧対立 3.幼稚園と児童研究の論争――「実験学校」設立 3-1 児童研究によるフレーベル主義批判 3-2 実験学校の設立 4.実験学校を受けた幼小接続カリキュラム開発 4-1 幼稚園カリキュラム策定 4-2 幼小接続カリキュラム開発の試み 小 括
結 論
初出一覧 主要参考文献一覧 あとがき 索引
[著者略歴] 山本 孝司(やまもと たかし) 1971年生。広島県大竹市出身。広島県立五日市高等学校卒業後、早稲田大学教育学部教育学科教育学専修に学ぶ。1997年に早稲田大学大学院教育学研究科修士課程学校教育専攻を修了し、2003年に早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程教育基礎学専攻単位取得満期退学。2018年2月に論文「ブロンソン・オルコットの超越主義思想に関する研究―アメリカ進歩主義教育の思想的水脈再考―」で早稲田大学より博士(教育学)の学位を授与される。 職歴としては、九州看護福祉大学看護福祉学部専任講師・准教授、岡山県立大学保健福祉学部教授を経て、現在、西南学院大学人間科学部教授。 著書に『超越主義と教育―ブロンソン・オルコット思想研究序説』(現代図書、2011年)、『アメリカ進歩主義教育の源流―ブロンソン・オルコット思想研究』(早稲田大学出版部、2020年)などがある。
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商品の詳細
ISBN: 978-4-7793-0792-8
判型: A5
ページ数: 256
ジャンル: 教育
刊行年: 2025年11月
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