北欧学 構想と主題 尾崎和彦著 - 北樹出版の大学教科書

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北欧学 構想と主題

北欧学 構想と主題
北欧神話研究の視点から
尾崎和彦
価格: 8,500円+税

商品の紹介

「北欧神話」に表象される最深の論理と民族意識を抽出し、「北欧的精神」の原初的形態を探究。「たった一人の宗教」という理念を手がかりに、19世紀ロマン主義影響下における北欧神話の復興と、反ロマン主義思想家キェルケゴールとの関係を描く。終章では、「北欧的なもの」に関する著者のこれまでの探究の軌跡を紹介し、なかんずく宗教批判・医療倫理・環境思想の領域における「北欧的ヒューマニズム」の可能性を提示する。


[著者紹介]
1936年岡山県金光町に生まれる。1961年岡山大学法学部哲学科哲学専攻卒。1967年京都大学大学院宗教学専攻博士課程単位取得。1970年から1972年にかけてコペンハーゲン大学・ミュンヘン大学・テュビンゲン大学に留学。1977年、明治大学政経学部教授。1989年コペンハーゲン大学・ウプサラ大学客員研究員。1996年文学博士(京都大学)。2007年明治大学定年退任。名誉教授。

著書に、『北欧思想の水脈−単独者・福祉・信仰‐知論争』(世界書院 1994年)、『北欧神話・宇宙論の基礎構造−「巫女の予言」の秘文を解く』(白凰社 1994年)、『スウェーデン・ウプサラ学派の宗教哲学−絶対観念論から価値ニヒリスムへ』(東海大学出版会 2002年)、『生と死・極限の医療倫理学−北欧・スウェーデンにおける「安楽死」問題を中心に』(創言社 2002年)、『ディープ・エコロジーの原郷−ノルウェーの環境思想』(東海大学出版会 2006年)他。訳書に、ヨハネス・スレーク『実存主義』(法律文化社 1976年)、E.ガイスマー『キェルケゴールの宗教思想』(東海大学出版会 1978年)、ベルンハルト・メールポール『絶望の形而上学ーキェルケゴール「死に至る病」の問題』(東海大学出版会 1980年)、『野の百合と空の鳥ー三つの敬虔な講話』キルケゴールの講話・遺稿集 6(飯島宗享編 新地書房 1980年)、キェルケゴール著作全集 原典訳記念版 第10巻『愛の業』(佐藤幸治共訳 創言社 1991年)、アクセル・オルリック『北欧神話の世界ー神々の死と復活』(青土社 2003年)他。



序 章 「北欧学」の構想−北欧神話から北欧学へ
はじめに 「北欧学」への私的動機
1「北欧学」の基礎概念としての「北欧的なもの」
2 北欧神話における「北欧的なもの」
3 19世紀北欧精神史における「北欧的なもの」
 (1)「北欧的なもの」としての「北欧民族精神」
 (2)ローセンベーャにおける「北欧的なもの」の現象形態
 4 現代北欧文化史における「北欧的なもの」
 (1)文化の枠組みの表現としての「北欧的なもの」
 (2)現代北欧文化史の方法論と「北欧的なもの」の現象
 5 北欧の神話・精神史・文化史における「北欧的なもの」の再吟味と「北欧学」成立基盤の確認

第1章 北欧神話の世界観−G・V・リュングの所論に負いつつ
 はじめに 本章における北欧神話解読の方法
 1 北欧神話の輪郭構造
 2 北欧神話・世界観の基本的前提と構成原理
 (1)北欧的人生観の特質
 (2)北欧神話・世界観の構成原理−自然と精神の相克
 3 北欧神話・世界観の展開
 (1)北欧神話・世界創成論の秘儀−「ラグナロク」への前奏
  原罪的行為としての創成/神々の堕落と人間の創成
 (2)北欧神話・世界形態論の様相−「ラグナロク」の前現象
  ウルズの泉とミーミルの泉/アース神族とヴァン神族/アース神の城塞の再建/バルドル神話の秘密/神族と巨人族の戦い〈1〉−無精神性の問題/神族と巨人族の戦い〈2〉−悪の問題
 (3)北欧神話・異教的終末論・ラグナロク神話−破滅と再生
  神々の運命と世界破滅の様相/世界復活の様相/「復活」の根源的意味−新たな宗教の創設へ

第2章 北欧神話の中心問題−黄金時代・ラグナロク神話・改宗
 はじめに
 1「黄金時代」のイメージ
 (1)「黄金時代」の基本的意味
 (2)「イザヴォル」
 (3)「神々の活動」
 (4)「祭壇と神殿の建立」
 (5)「黄金の駒」と「盤戯」
 2 「ラグナロク神話」の図像表現
 (1)「ラグナロク神話」の意味
 (2) 岩盤刻画と絵画石碑
 (3)「ゴスフォースの十字架石碑」に見る「ラグナロク神話」像
  異教的それともキリスト教的?−W・カルヴァーリとR・ライツェンシュタイン/「ゴスフォースの十字架」の図像解析の視点/「ゴスフォースの十字架」の図像解析
 (4)最近の図像解析の結果について
 3 北欧人における「改宗」の真相
 (1)「改宗」の比較思想的意味
 (2)「改宗」の外的経過
 (3)北欧人の「改宗」の特質
 
第3章 ゲルマン初期王権の問題−北欧神話との接点
 1 ゲルマン初期王権論の諸相
 (1)ゲルマンの連続性
 (2)「聖なる王権」
 (3)問題考察の視点
 (4)問題考察の方法論
 2 ゲルマン初期王権の神話的基礎
 (1)『ゲルマ−ニア』の提起する問題
 (2)神聖王権の可能性
 (3)王権の神的起源

第4章 19世紀北欧思想と北欧神話
 はじめに
 1 北欧ロマン主義と北欧神話
 (1)北欧ロマン主義における北欧神話の役割
 (2)ロマン主義とハイベーャ・アンデルセン・キェルケゴール
 (3)「グルントヴィvs.キェルケゴール」をめぐる三つの見解
 2 北欧民族精神をめぐるキェルケゴールとグルントヴィ
   −O.P.モンラーズの『セーレン・キェルケゴール』の投じる問題
 (1)モンラーズにおける北欧民族精神理解の前提−セーデルブロームとカーライル
 (2)モンラーズにおける北欧神話とグルントヴィ及びキェルケゴールの接点
 (3)北欧的「人格性」概念のさらなる内包と外延
 (4)特にキェルケゴールにおける「北欧的なもの」

第5章 北欧神話・グルントヴィ・キェルケゴール
 1 グルントヴィと北欧神話−グルントヴィの北欧的発展
 (1)「宗教的危機」(1810-11年) 以前のグルントヴィと北欧民族精神
 (2)「宗教的危機」以後のグルントヴィと北欧民族精神
 (3)北欧の「戦いの精神」
 2 キェルケゴールの神話理解
 (1)キェルケゴールと「神話」一般
 (2)日誌記述におけるキェルケゴールの神話概念
 (3)『イロニーの概念について』におけるキェルケゴールの神話概念
 3 キェルケゴールと北欧神話
 (1)日誌記述に見るキェルケゴールと北欧神話の関係−非連続性?
 (2)北欧神話とキェルケゴールを繋ぐもの−「原罪意識」
 (3)『巫女の予言』の詩人とキェルケゴール−「ただ一人の宗教」
  『巫女の予言』第55節の問題−「大いなる者・強き者・すべてを統べる者」/
   キェルケゴール「教会闘争」の目指すもの−「新約聖書のキリスト教」による破壊と再生

終 章 わたしの「北欧学」の構成 −「北欧的ヒューマニズム」の探究
(1)北欧思想史の試み−デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フィンランド
 「スカンディナヴィア哲学思想の諸傾向」ヨハンネス・スレーク『実存主義』への訳者付論
(2)福祉論・信仰論−デンマーク
  『北欧思想の水脈 単独者・福祉・信仰−知論争』
(3)北ゲルマン異教宗教のコスモロジー−アイスランド・ノルウェー
  『北欧神話・宇宙論の基礎構造−〈巫女の予言〉の秘文を解く』
(4)宗教の徹底批判としての宗教哲学−スウェーデン
  『スウェーデン・ウプサラ学派の宗教哲学−絶対観念論から価値ニヒリスムへ』
(5)医療倫理の窮境−スウェーデン他
  『生と死 極限の医療倫理学−スウェーデンにおける安楽死問題をめぐって』
(6)環境思想の北欧的特性−ノルウェー
  『ディープ・エコロジーの原郷−ノルウェーの環境思想』

商品の詳細

ISBN: 978-4-7793-0558-0
判型: A5
ページ数: 672
ジャンル: 哲学・倫理・宗教
刊行年: 2018年7月25日

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