商品の紹介
(カバーデザインのメッセージから) カバー正面:震災は、人と人との〈絆〉というものがうるわしいだけではなく、いとわしくもあることを示す。その真実に光をあてた本書では、被災地での人生の時間を、創造的な協同作業に活かすことを提案する。〜「個室シェルター」や「トイレ作法」のアイディアに注目 〜
カバー背面:その人の存在をまざまざとよみがえらせ、対話できる関係でいられるのなら、その人はいま、そこに「生きている」のである。突然の別れが訪れても、お互いが直ちに「生者と死者」に分かれるわけではない。本書でも、「生者」か「死者」かの便宜的な使い分けは、一切、しないことにした。
【本書の特色5選】
(1)未曾有の大災害が生じた際に表面化する<絆>の暗い側面を、選び抜かれた事例で示し、誰もが正面から扱いたがらない社会問題を、要約している。そのなかに織り込まれた「日本人と宗教」をめぐる論考に、宗教学者としての視点が活かされている。
(2)苦悩の渦中に生きる人々の日常(避難生活)を少しでも改善しうる方法(「個室シェルター」の製作・設置・活用、足りない生活必需品を創る協同作業など)を具体的に提案することにより、著者自身の震災体験に根差した社会貢献への意志を、明らかにしている。
(3)大災害に際して、行方不明のまま帰らない人を待つ家族の思いを尊重するためにも、あえて、「生者と死者」の二分法を使わない文章が工夫されている。人が本当に「生きている」とは、単なる生存だけを意味するのではないことを、考えさせる。
(4)辛い<絆>を離れ、新しい<絆>を結んで去って行った「不思議な一団」についての記述は、家族の“霊”と再会したという従来の体験談とは一線を画する事例である。万人の好奇心を満たす内容ではないが、人間の幸福追求をめぐる、一つの問題提起になっている。
(5)水と森の豊かな日本でも、災害時にはトイレの水と紙の不足に苦しむ現実を警告し、少ない水で快適な生活を営むための方法を示している。ここでも、正面切って詳細に記述されたことのない実践的な提案がみられる。災害時のみならず、外出時のトイレを快適に済ませるには有益な知識。
○目次
はじめに
第1章 いくつかの問題提起 1 復興支援ソング「花は咲く」への違和感 2 「生者と死者」は、便宜上の二分法 3 「必然」よりも「偶然」 4 「犠牲者」と呼ぶことの弊害 5 「絆」という語の二面性
第2章 堪えがたい〈絆〉からの解放を求める人びと 1 行方不明者と身元不明者 2 帰りたくない人たちとの対話 ―Mさんと不思議な一団との邂逅― 3 震災を機に、より一層、堪えがたくなる〈絆〉 4 「愛別離苦」と「怨憎会苦」の真意
第3章 恵まれた〈絆〉からの自由を求める人びと 1 「心より、ご冥福をお祈りいたします」の「冥福」って何ですか? 2 「成仏して天国に行ってね」とか「天国でまた会おう」と言うのは変ですか? 3 『般若心経』の読経がなぜ、供養になるのですか? 4 「見守っていてください」と言うのは、故人の加護を期待しているのでしょうか? 5 自由になればこそ、〈絆〉も深まるという逆説
第4章 やがて生ずべき災害に備えた、新しい〈絆〉の創案 1 プライヴェート空間を守るバリア用品の開発を急ぐ 2 学校や家庭の〈絆〉を離れられる協同作業の場を作る 3 インド人のトイレ作法に学ぶ 4 インドで愛用した行水バケツの思い出
図解 あとがきにかえて 註(1)〜(60)※「日本から学ぶ10のこと」の英文和訳(155頁)を収録 本書のキーワード20選 推薦図書
○著者略歴
田中かの子
東京生まれ 1986年 玉川大学文学部英米文学科英米文学専攻卒業 1994年 駒澤大学大学院人文科学研究科博士課程仏教学専攻修了 1994年12月、インド国立デリー大学大学院人文科学研究科博士課程にて Ph.D.(哲学博士号)取得 1994〜1996年 ケンブリッジ大学客員研究員 1999年 比較思想学会賞(研究奨励賞)受賞 現在 駒澤大学講師 研究領域 インド仏教文化史、比較宗教学、社会貢献型の文化人類学、 ヒューマンケア(医療や教育の場における人間学の実践)、 フィロソフィー(実地体験→思索と創造→教育と評価) 著書 『アジアの宗教と精神文化』(共著、新曜社、1997年) Absence of the Buddha Image in Early Buddhist Art -Toward its Significance in Comparative Religion-, D.K.Printworld (P) Ltd., New Delhi, 1998 『比較宗教学「いのち」の探究』(北樹出版、2011年、新装改訂版)
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